🧠パーキンソン病と運動の効果、そして鍼灸治療の可能性

パーキンソン病は、脳の「黒質(こくしつ)」という部分でドーパミンという神経伝達物質が減少することで、
体を動かす命令がスムーズに伝わらなくなる神経変性疾患です。

主な症状は次の通りです。

  • 手足のふるえ(振戦)
  • 筋肉のこわばり(筋強剛)
  • 動作が遅くなる(動作緩慢)
  • バランスの崩れ(姿勢反射障害)

症状はゆっくり進行しますが、薬物治療・運動・リハビリ・鍼灸などを組み合わせることで、
生活の質を保ち、進行を遅らせることが可能といわれています。


【1】運動療法がパーキンソン病に効果的な理由

多くの研究で「定期的な運動」がパーキンソン病の進行抑制や症状緩和に役立つことが報告されています。

🔹代表的な運動と効果

運動の種類期待できる効果
ウォーキング・ノルディックウォーキング下肢の筋力維持、バランス改善
ヨガ・太極拳姿勢改善・柔軟性向上・自律神経の安定
ダンス(特に音楽に合わせた動き)リズム運動が脳内ドーパミン活動を刺激
水中運動転倒リスクを減らしながら全身の筋活動を促す

🔹エビデンス

2023年の米国神経学会誌「Neurology」に掲載された研究では、
「週3回以上の中等度運動(有酸素運動+筋トレ)」を続けた群で、歩行機能・姿勢安定性・生活満足度が有意に改善 したと報告されています。

運動は単なる筋トレではなく、脳の可塑性(のうのかそせい:脳が再びつながりを作る力) を高める働きもあります。


【2】鍼灸治療が注目される理由

薬物療法と運動だけでなく、鍼灸治療(しんきゅうちりょう) もパーキンソン病に対して世界的に研究が進んでいます。

🔹鍼灸の主な作用メカニズム

  1. 脳血流の改善
    • 鍼刺激により「中脳」「前頭葉」などの血流が増加し、神経伝達が促進されるという報告があります。
  2. 自律神経バランスの調整
    • 自律神経の乱れが筋肉のこわばりや震えに影響するため、鍼灸で副交感神経を高めることで症状が軽減。
  3. 筋緊張の緩和と可動域の改善
    • 筋肉の緊張をやわらげることで、リハビリの効果を高め、転倒リスクの低減にもつながります。
  4. ドーパミン代謝の促進
    • 一部研究では、鍼刺激がドーパミン分泌を促す可能性が示唆されています(実験動物モデルより)。

🔹臨床研究データ

  • 中国の研究(Frontiers in Neurology, 2021)では、
    鍼治療を12週間継続した患者で、UPDRS(統一パーキンソン病評価スケール)の運動スコアが有意に改善
  • 韓国・延世大学の研究(2019)では、鍼刺激が脳内血流および認知機能の改善に寄与することが報告されています。

【3】ゆうしん治療院での鍼灸アプローチ

当院では、パーキンソン病に対する鍼灸を「脳と身体をつなぐ治療」として考えています。

🔹主な施術方針

  • 頭部鍼(YNSA:山元式新頭鍼療法) を中心に、脳の血流・神経伝達をサポート
  • 自律神経調整:心拍・睡眠・消化・体温など、体内リズムを整える施術
  • 筋肉の緊張緩和・関節可動域拡大
  • 継続的な運動・リハビリとの併用を重視

🔹期待できる変化

  • 手足のこわばりがやわらぐ
  • 姿勢・バランスの改善
  • 表情が明るくなる
  • 睡眠や食欲の安定
  • 「動き出しのしやすさ」が変わる(歩き出し・立ち上がりなど)

【4】まとめ:運動と鍼灸の“ダブルケア”が鍵

パーキンソン病は進行性の病気ですが、
運動+鍼灸+薬物治療の三本柱でケアすることで、症状の進行をゆるやかにし、
「その人らしい生活」を長く保つことが可能です。

当院では、医師の治療を尊重しながら、
「身体を動かしやすくする」「心を落ち着ける」「生活を支える」鍼灸治療を行っています。


🔍参考文献

  • Neurology, 2023; 100(5): “Exercise Therapy in Parkinson’s Disease”
  • Frontiers in Neurology, 2021; “Clinical efficacy of acupuncture for Parkinson’s disease: A systematic review and meta-analysis.”
  • Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2019; “Effects of acupuncture on cerebral blood flow in patients with Parkinson’s disease.”
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