「脈を診るだけで、そこまで分かる?」当院が施術前に脈診をする理由

「最近、胃腸の調子が悪くないですか?」
「身体がだるく貧血気味ですか?」
脈を診たあと患者様にこう尋ねると、
「えっ、なんで分かるんですか?」
と驚かれることがあります。
当院では、鍼をする前に必ず手首の脈を診ます。
これは単純に「1分間に何回脈を打っているか」を測っているわけではありません。
※東洋医学は、現代医学的な脈の見方とは全く違います。
東洋医学には「脈診(みゃくしん)」という身体の診方があります。
肩こり、腰痛、頭痛など、症状が出ている場所だけを見るのではなく、
「今、この人の身体(ココロとカラダ)全体がどのような状態なのか?」
を考えるために、当院では脈診をとても大切にしています。

脈は「速い・遅い」だけではありません
東洋医学の脈診では、手首に指を当て、
・強いのか、弱いのか
・浅いところで感じるのか、深いところで感じるのか
・速いのか、ゆっくりなのか
・滑らかさはどうなのか
・左右で違いがあるのか
・指を置く場所によって、どのような違いがあるのか
など、さまざまな特徴を確認します。

初めて聞いた方は、
「手首の脈にそんな違いがあるの?」
と思うかもしれません。
しかし経絡治療では、この微妙な違いを身体を考えるための情報の一つとして利用します。
腰痛なのに「胃腸の調子はどうですか?」
例えば腰痛で来院された患者様。
普通なら「腰が痛い」という話が中心になると思います。
ところが当院では、脈を診て、
「最近、胃腸の調子はどうですか?」
と聞くことがあります。
すると、
「実は最近ずっと胃がもたれています」
「下痢が続いています」
「食欲が落ちています」
など、腰痛とは別の症状が出てくることがあります。
患者様からすると、
「腰が痛くて来たのに、どうして胃腸のことまで?」
と驚かれるところです。
東洋医学では、人間の身体を一つのつながったものとして考えます。
そのため「腰だけ」「肩だけ」と部分的に考えるのではなく、身体全体を診ていきます。
貧血などがある方で脈の違いを感じることも
身体が疲れていたり、消耗していたりする場合にも、脈の特徴が普段と違って感じられることがあります。
そこで、
「最近かなり疲れていませんか?」
「立ちくらみはありませんか?」
などと詳しく伺ってみると、
「実は健康診断で貧血を指摘されています」
ということもあります。
もちろん、脈診で医学的な貧血を診断しているわけではありません。
貧血の診断には血液検査が必要です。
脈から身体の状態を考え、それをきっかけに問診を深めていく。
脈診はそのための一つの方法です。

妊娠すると脈が変わる?
当院では不妊鍼灸も行っているため、妊娠を希望されている患者様の脈を継続して診る機会が多くあります。
毎回脈を診ているからこそ、
「今日はいつもの脈と少し違うな」
と感じることがあります。
実際、東洋医学には古くから妊娠時の脈についての考え方があります。
妊娠すると女性の身体にはさまざまな変化が起こります。
そのため、妊娠前から継続して診ている患者様では、いつもとは違った脈の印象を感じることがあります。
その後、
「先生、妊娠していました!」
と報告をいただくこともあります。
ただし、ここも大切なところです。
脈診だけで妊娠を確定することはできません。
妊娠の確認には妊娠検査薬、血液検査、超音波検査などが必要です。
脈診では「妊娠を診断する」というより、身体に現れている変化を見ています。

「赤ちゃんの性別も脈で?」という考え方まで
さらに驚かれるのが、古くから伝わる脈診には、妊娠後の左右の脈などから赤ちゃんの男女を推測する考え方まであることです。
「脈でそこまで見るの?」
と思われるかもしれません。
それほど昔の人たちは、人間の身体に現れる小さな変化を細かく観察してきたということなのでしょう。
非常に興味深い東洋医学の考え方です。
ただし、脈診によって胎児の性別を正確に判定できることが現代医学で確立されているわけではありません。
当院でも性別を医学的に診断する方法として行っているわけではなく、伝統的な脈診にはこうした考え方もあるという位置づけです。
急性なのか、慢性なのかも考える
脈診では「表・裏」「虚・実」など、東洋医学独特の考え方で身体の状態を捉えます。
例えば、
「昨日突然、腰が痛くなった」
という人と、
「もう5年以上、腰痛を繰り返している」
という人。
同じ「腰痛」でも身体の状態は同じではありません。
比較的新しく起こった症状なのか。
長期間続き、身体全体が疲れている状態なのか。
脈だけで急性・慢性を決めるわけではありませんが、症状が始まった時期や経過、問診などと合わせて施術を考える材料になります。
なぜ、そこまで全身を見るの?
理由はシンプルです。
人間の身体は、パーツごとに完全に分かれているわけではないからです。
例えば「肩こり」の患者様でも、
睡眠不足がある。
胃腸の調子が悪い。
身体が冷えている。
仕事のストレスが強い。
頭痛もある。
月経前になると悪化する。
このように詳しく診ていくと、「肩こり」という一言だけでは分からなかった身体の背景が見えてきます。
だから当院では、
「肩が痛いから肩のツボ」
「腰が痛いから腰のツボ」
と最初から決めることはしません。
まず身体全体を診る。
そのために脈診を行います。

脈診をして「本治法」を決めます
当院の経絡治療で特に大切にしているのが、本治法(ほんちほう)です。
本治法とは簡単にいうと、
症状が出ている部分だけではなく、身体全体の状態を考えて行う施術です。
脈診などから、
「今日はどの経絡を中心に整えるのか」
「どのツボを使うのか」
「どのくらいの刺激量にするのか」
を考えます。
そして、できるだけ必要最低限の刺激から施術を始めます。

肩に一本も鍼をしていないのに「肩が軽い!」
経絡治療をしていて、患者様が特に驚かれるのがここです。
例えば肩こりで来院された患者様。
脈診から本治法を行い、まだ肩には一本も鍼をしていない状態で、
「一度、肩を動かしてみてください」
と確認してもらうことがあります。
すると、
「あれ?肩が軽い!」
「さっきより首が回る!」
と驚かれることがあります。
腰痛の方でも、本治法を行ったあと、
「腰が痛くないです」
と言われることがあります。
もちろん、すべての方が同じように変化するわけではありません。
しかし本治法だけで主訴に変化が出れば、痛い場所に必要以上の刺激をする必要がない場合もあります。
症状が残っていれば、その時点で必要な局所施術(標治法)を追加します。
たくさん鍼を刺すことが目的ではありません。
その人の身体に必要な場所へ、必要な刺激をする。
その判断のためにも脈診を大切にしています。
同じ患者様でも、毎回同じ施術にはなりません
人間の身体は毎日同じではありません。
先週は仕事が忙しくて寝不足だった。
今日は胃腸の調子が悪い。
今回は身体が冷えている。
月経前でいつもと体調が違う。
同じ患者様が同じ「肩こり」で来院しても、身体の状態まで前回と同じとは限りません。
だから当院では、毎回脈を診ます。
「前回このツボだったから、今日も同じツボ」ではありません。
今日の身体を診て、今日の施術を決める。
これが当院の経絡治療です。
脈診は「病気当て」ではありません
ここまで読むと、
「それなら脈だけで何でも分かるの?」
と思う方もいるでしょう。
そうではありません。
脈診は病気を当てるためのものではありません。
当院では脈診だけでなく、
現在の症状、これまでの経過、睡眠、食欲、胃腸の状態、冷え、疲労、月経、生活習慣などについてもお話を伺います。
さらに身体に触れて状態を確認し、それらを総合して施術を組み立てます。
そして、医療機関での検査が必要と考えられる症状については、鍼灸だけで対応しようとせず、病院での検査・受診をおすすめします。
東洋医学と現代医学は、どちらか一方だけを選ぶものではありません。
それぞれの良いところを生かすことが大切だと当院では考えています。
「痛いところ」ではなく「その人」を診る
当院が大切にしていることを一言で表すなら、
「症状だけではなく、その人を診る」
ということです。
肩こりという症状だけを見る。
腰痛という症状だけを見る。
それだけではなく、
「なぜ今、この人の身体にこの症状が出ているのだろう?」
と身体全体を考える。
そのための大切な情報の一つが「脈」です。
だから上尾ゆうしん鍼灸院では、施術前に毎回脈を診ています。
「痛いところに鍼をするだけではない。」
「身体全体を診て、その人に必要な鍼をする。」
これが、当院が脈診と経絡治療を大切にしている理由です。

上尾ゆうしん鍼灸院
上尾ゆうしん鍼灸院では、経絡治療をベースに、脈診・問診・身体の状態などを確認しながら、一人ひとりに合わせた鍼灸施術を行っています。
肩こり、腰痛、頭痛など症状のある部分だけでなく、睡眠、冷え、胃腸の状態、疲労、月経、生活習慣など、その方の背景も大切にしています。
「痛いところだけではなく、身体全体を診てもらいたい」
「今まで受けてきた鍼灸とは少し違う施術を受けてみたい」
という方も、お気軽にご相談ください。
※脈診は東洋医学に基づいて身体の状態を捉え、施術方針を考えるための方法の一つです。医学的な病気、貧血、妊娠、胎児の性別などを確定診断するものではありません。必要に応じて医療機関での検査・診断をおすすめしています。
