経絡治療は「本治」と「標治」の二段構え|全身と主訴の両方を診る理由

「肩が痛いのに、どうして手や足にも鍼をするの?」

「腰痛なのに、お腹や脈を診るのはなぜ?」

経絡治療を受けたことがある方の中には、このように感じたことがあるかもしれません。

経絡治療では、痛みのある場所だけを施術するのではなく、身体全体の状態を整えたうえで、主訴(いちばん困っている症状)に対する施術を行うという考え方を大切にしています。

分かりやすく言えば、治療は「二段構え」です。

目次

経絡治療は「本治」と「標治」の二段構え

経絡治療では、大きく分けて次の2つの治療を行います。

一段目:身体全体を整える「本治(ほんち)」
二段目:主訴や患部に対して行う「標治(ひょうち)」

たとえば腰痛の患者さんであれば、

「腰が痛いから腰だけに鍼をする」

という考え方だけではありません。

まず身体全体の状態を診て、その方に必要な経絡やツボを選び、本治を行います。

そのうえで必要に応じて、腰や臀部など実際に症状が出ている場所に対して標治を行います。

つまり、

本治で全身を整える

標治で主訴や患部にアプローチする

という二段構えです。


一段目|身体全体を整える「本治」

経絡治療で特に大切にしているのが、一段目の本治です。

本治では、

  • 脈の状態
  • お腹の状態
  • 身体の冷えや熱
  • 筋肉の緊張
  • 睡眠や疲労
  • 胃腸の状態
  • 体調の変化

などを参考にしながら、その人の身体が現在どのような状態なのかを考えていきます。

そして東洋医学的に身体の状態を判断し、「証(しょう)」を決めます。

「証」という言葉は一般の方には少し難しいかもしれません。

簡単に言えば、

「今の身体の状態を東洋医学の考え方で整理し、どのような治療が必要なのかを決めること」

です。

その証をもとに、身体全体のバランスを整えるためのツボを選び、鍼をしていきます。


本治だけでも主訴が軽くなることがあります

ここが経絡治療の大きな特徴の一つです。

まだ肩や腰など、痛い場所そのものに鍼をしていない段階でも、

「肩がさっきより上がります」

「腰の痛みが軽くなりました」

「首が回りやすくなりました」

と変化することがあります。

これは、一段目の本治によって身体全体の状態が変化し、その結果として主訴にも変化が現れたと考えます。

そのため当院では、可能な場合には本治の前後で痛みや動きを確認することがあります。

たとえば肩が上がりにくい方なら、

本治前に肩を上げてもらう

本治を行う

もう一度、肩を上げてもらう

というように変化を確認します。

患部に直接鍼をする前にどのくらい変化したのかを見ることで、その方の身体に対して本治が合っているかを判断する材料にもなります。


二段目|主訴・患部に対する「標治」

本治に対して、現在出ている症状や患部に対して行う治療を「標治」といいます。

たとえば、

  • 肩こりなら肩や首
  • 腰痛なら腰や臀部
  • 膝の痛みなら膝周囲
  • 腱鞘炎なら手首や前腕

など、実際に症状が出ている場所を詳しく診て治療していきます。

筋肉の緊張、圧痛、動作時の痛み、可動域などを確認しながら、必要な場所に鍼を行います。

これが二段目の標治です。

つまり、

【一段目】本治
身体全体を整える

主訴の変化を確認

【二段目】標治
残っている症状や患部を治療する

という流れになります。


「本治」と「標治」はどちらも大切

経絡治療というと、

「全身調整だけをする治療なのでは?」

と思われることがあります。

しかし、当院では患部もしっかり診ます。

本治だけに偏るのでもなく、標治だけに偏るのでもありません。

身体全体を診る「本治」と、今困っている症状を診る「標治」の両方を組み合わせることが大切だと考えています。

ただし、経絡治療において治療の土台になるのは、やはり一段目の本治です。


なぜ「本治」がそんなに重要なのか?

経絡治療では、単純に

「肩こりだからこのツボ」

「腰痛だからこのツボ」

と決めて鍼をするわけではありません。

同じ肩こりでも、同じ腰痛でも、身体の状態は一人ひとり違います。

そのため大切なのが、

その人の状態を正しく把握して「証」を決め、適切なツボを選ぶことです。

そして選んだツボに対して、その人に合った刺激を行います。

経絡治療では、強い刺激をたくさん行えば効果が高くなるとは限りません。

むしろ、

「どこに鍼をするのか」
「どのくらいの刺激をするのか」

を見極めることが重要だと考えています。

本治で証を的確に判断し、適切なツボに鍼をできるかどうか。

この部分によって、その後の身体の変化にも違いが出てきます。


本治で変化し、標治でさらに整える

たとえば肩の痛みが「10」あるとします。

本治を行った段階で、

「痛みが10から5くらいになった」

「肩がかなり上がるようになった」

という変化が出ることがあります。

そのうえで、まだ残っている肩周囲の緊張や痛みに対して標治を行います。

つまり、

本治で身体全体から主訴を軽減させ、
標治で残っている症状をさらに整える。

これが経絡治療の二段構えです。

標治だけで患部を治療するのではなく、先に本治を行うことによって、身体全体を整えた状態で主訴にアプローチできることが経絡治療の特徴でもあります。


「肩こりだから肩だけ」ではなく、身体全体を診る

現代では、

「肩が痛ければ肩」

「腰が痛ければ腰」

という考え方が分かりやすいと思います。

もちろん患部をしっかり診ることは重要です。

しかし人間の身体は、それぞれの場所が完全に独立しているわけではありません。

疲労、睡眠、胃腸の状態、冷え、ストレス、日常生活など、さまざまな要素が重なって現在の身体の状態がつくられています。

そのため当院では、

「症状が出ている場所」と「身体全体」の両方を診る

ことを大切にしています。


経絡治療は「本治+標治」

経絡治療をできるだけシンプルに表現すると、

一段目|本治

証を決め、身体全体を整える治療

二段目|標治

主訴や患部に対して行う治療

という二段構えです。

そして経絡治療の特徴が最も現れるのが、一段目の本治です。

身体の状態を診て証を決め、その方に合ったツボを選び、適切な刺激を行う。

本治だけでも、患部に直接鍼をする前から主訴が軽減することがあります。

そのうえで、残っている症状に対して標治を行います。

当院では、

「痛いところだけを診る」のではなく、
「身体全体を整える本治」と
「今困っている症状を診る標治」の両方を大切にしています。

全身を整え、主訴の変化を確認し、最後に患部もしっかり治療する。

それが当院が行っている経絡治療の基本的な考え方です。

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